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名古屋地方裁判所 平成元年(行ウ)8号 判決 1991年10月30日

原告

加藤化学株式会社

右代表者代表取締役

加藤鐘一

右訴訟代理人弁護士

伊藤典男

伊藤倫文

被告

半田税務署長

田中亮

右指定代理人

長谷川恭弘

外四名

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、原告に対して昭和六二年六月三〇日付でした昭和五九年四月一日から昭和六〇年三月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税につき、所得金額を四億六三三八万六七二一円、納付すべき税額を一億二三九二万八二〇〇円とする更正処分(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税額を九〇二万二五〇〇円とする賦課決定処分(以下「本件決定」といい、本件更正と合わせて「本件課税処分」という。)をいずれも取り消す。

第二事案の概要

本件は、課税処分の取消訴訟において、①原告の工場に設置された発電用ボイラー設備(以下「本件ボイラー」という。)及び蒸気タービン発電設備(以下「本件タービン」といい、本件ボイラーと合わせて「本件設備」という。)につき、減価償却(法人税法三一条一項)をすることができるか、②本件設備を本件事業年度中に取得し事業の用に供したものとして、租税特別措置法(昭和六〇年法律第七号による改正前のもの。以下「措置法」という。)四五条の二に規定する中小企業者等の機械等の特別償却をすることができるか、という点が争われた事案である。

一争いのない事実等

1  本件課税処分の経緯等

(一) 原告は、頭書住所地において製飴業等を営む青色申告法人で、法人税法二条一〇号にいう同族会社である。

(二) 原告の本件事業年度の法人税についての確定申告、修正申告、更正処分、異議申立て、異議決定、審査請求及び審査裁決の各年月日、税額等は、別表(1)記載のとおりである。原告の修正申告の内容を加味した申告内容の内訳と更正処分の内訳の比較は、別表(2)記載のとおりであり、本件設備にかかる減価償却費として申告された額は五五五四万〇八八六円、本件設備にかかる特別償却準備金として申告された額は二億二八〇七万二三六四円であった。右減価償却費及び特別償却準備金以外の原告の所得金額に関する計算関係は、同表の「更正処分額」欄記載のとおりである。

2  本件設備の設置経過等

(一) 原告は、昭和五八年一二月三日、株式会社タクマの代理人である住友商事株式会社名古屋支社(以下「住友商事」という。)との間で請負契約を締結し(以下「本件契約」という。)水飴製造のために使用する主蒸気流量九〇トンの本件ボイラー及び出力一万キロワット(いずれも一時間当たり。以下同じ。)の発電性能を有する本件タービン並びにその据付試運転工事を、請負金額七億二〇〇〇万円で発注した。なお、タクマは本件タービンの据付試運転工事について日本鋼管株式会社に下請けさせた。

本件契約には、次のような内容の条項が含まれていた(<書証番号略>)。

① 建設場所及び引渡し

住友商事は、原告の本社工場内の指定場所に、試運転完了期日を昭和六〇年一月三一日として施工する。本件設備は、原告の立会いのもとに住友商事が検査及び性能試験を行い、原告がこれを確認することをもって、住友商事から原告に引き渡されるものとする。

② 官公庁に対する手続

官公庁に対する本件設備の設置認可手続については、原告が責任をもって行う。

③ 官庁立会試験及び検収

官庁立会試験・検査は、本件設備の引渡しを受けた原告の責任において取り行われるものとするが、住友商事はこれらの試験・検査に合格するまで全面的に原告に協力するものとする。検収は、右の官庁立会試験・検査をもって行われるものとし、試験・検査の合格日を本件設備の検収日とする。ただし、本件設備の引渡し後一か月を過ぎても官庁立会試験・検査が実施されない場合、これが住友商事の責任によらないときは、引渡期日の一か月後を検収日とする。

④ 代金支払

原告は、住友商事に対し、本件設備の代金を、検収日の四か月後に現金にて住友商事の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。本件設備の検収後、住友商事は原告と協議の上、右の支払期日を満期日とする原告振出しの約束手形の交付を受けることができる。

⑤ 所有権移転

本件設備の所有権は、原告による代金の支払が完了したときに住友商事から原告に移転する。

(二) 本件ボイラーは、昭和五九年一〇月ころから、原告方工場に搬入されて組み立てられ(証人鈴木)、引続き、同年一一月から本件タービンが原告方工場に搬入されて組み立てられた。そして、電気事業法による自家用電気工作物に関する検査に関しては、名古屋通商産業局に対し、同年九月二八日付で本件ボイラーについて先行検査願が出されており、原告は、同年一〇月一九日付で使用前検査を申請し、同年一一月三〇日合格、また、本件タービンについては同月一六日付で使用前検査を申請し、昭和六〇年一月一〇日合格という経過であり、同月一六日付で使用期間を同月一八日から同年三月二四日として本件設備の試験使用届出をした。

(三) 本件設備の試運転は、昭和六〇年二月から実施されたが、本件タービンについては、試運転中にギヤ部破損、起動時の蒸気漏洩等のトラブルが発生し、また、タービンローターのアンバランスのためこれをとりはずして三井造船株式会社において調整を行う等、タクマ側で調整作業を続けた。同月二七日には、調速運転による総合負荷試験(ヒートラン)が行われ、本件ボイラーについては主蒸気流量八九トン(給水流量九〇トン)、本件タービンについては一万キロワットの出力が確認された(<書証番号略>)。そして、原告は、同日付で名古屋通商産業局に対し同年三月六日ないし八日を検査希望日として「工事の計画に係るすべての工事の完了した時」に行われるべき使用前検査(以下「官庁立会試験」という。)を申請した(<書証番号略>)。しかし、その後も本件タービンについて、再起動時の油圧変動、調圧弁脈動といったトラブルが発生し、その原因調査及び修理のためその後の工程を変更することとし、原告は同年三月四日付で検査日程の変更(官庁立会試験の検査希望日を同年四月八日ないし一〇日とするもの)を申請し(<書証番号略>)、かつ、同日付で本件設備の試験使用(延長)届出(使用期間を同年三月二五日から同年四月二〇日とするもの)をした。

(四) 同年三月一四日には、背圧制御による総合負荷試験が実施され、所定の出力が確認されたが(<書証番号略>)、その後も、本件タービンについてタービン安全油圧低下、回転数検出駆動軸ブッシュ焼損等のトラブルが発生し、調整作業が続けられた。

(五) 官庁立会試験は同年四月八日から一〇日にかけて行われ、同日、これに合格したが、その後も、本件設備の性能等について、原告、タクマ、住友商事及び日本鋼管関係者の間で打合せが行われ、同年五月から六月にかけてタクマ側により本件設備の発電性能を一万キロワットから一万〇五〇〇キロワットにするための改造工事(以下「本件改造工事」という。)が行われた。

3  代金の支払

原告は、住友商事から同年七月二〇日付の請求書により本件設備の請負代金の請求を受け、同年九月五日に同年一〇月二六日を支払期日とする四通の約束手形を交付し、その支払期日に右手形を決済した。右約束手形の額面合計は七億三〇六五万円であり、本件改造工事代金として一〇六五万円が含まれていたが、原告は別途タクマから「試運転用C重油二一三キロリットル(単価五万円)」分の代金として一〇六五万円を受領しており、結局、本件改造工事について、本件契約の代金以外に追加の工事代金は支払われなかった。

二争点に関する当事者の主張

1  原告

減価償却制度は、当該減価償却資産の使用によって生ずる資産の減価を費用として認識していくとの考えに立っているため、法人税法上の減価償却の開始が認められ、また、措置法上の特別償却(以下、両者を単に「減価償却」ともいう。)が認められるためには、当該事業年度内において、当該資産を事業の用に供したことが必要であるがそれのみで足り、右資産の引渡しの有無自体は、「事業の用に供されている」か否かの判断資料の一つにすぎないものである。原告は、昭和六〇年二月二七日の総合負荷試験において、本件ボイラーが主蒸気流量八九トン(給水流量九〇トン)を記録し、本件タービンが一万キロワットの出力を記録したことが確認され、同日、タクマから本件設備一式の引渡しを受け、以後、原告が管理権を得てこれを運転し、自己の資産として本件設備を生産活動に不可欠なものとして稼働させているのであるから、本件事業年度における減価償却が認められるべきである。

なお、本件契約には、前記一2(一)③のような条項があったので、原告は、同日付で、名古屋通商産業局長に対し、官庁立会検査の申請をしているが、このことは、本件契約が官庁立会試験・検査の前に原告において本件設備の引渡しを受けたことを前提としていることを示すものである。また、同年七月一二日の本件設備の性能検査は、本件タービンについて、引渡し後トラブルが発生したのでその修繕工事をし、更に、その機会に出力を一万〇五〇〇キロワットにする改造工事をしたために行ったものであるから、本件設備の取得時期の判断に何ら影響を及ぼすものではない。

2  被告

減価償却が認められるためには、法人が当該減価償却資産を事業の用に供することが不可欠の要素ではあるが、それだけでは足らず、その前提として、当該法人が右資産を取得していなければならないのである。

本件契約には、前記一2(一)①のような条項があったが、本件設備は試運転中に大きなトラブルが続発したためその引渡しが大幅に遅れ、原告が本件設備の性能検査に基づいて本件設備の性能を確認し、検収したのは、同年七月一二日であったのであるから、本件設備の取得の日は同日であるというべきである。

第三争点に対する判断

一1 減価償却資産(法人税法二条一項二四号、同法施行令一三条)とは、事業の経営に継続的に利用する目的をもって取得される資産で、その用途に従って利用され、時の経過によりその価値が減少していく資産であり、その取得に要した金額(取得価額)は、将来の収益に対する費用の前払の性能を有し、資産の価値の減少に応じて減価償却費として徐々に費用として計上されるものである。したがって、法人が減価償却資産について減価償却費を各事業年度の損金の額に算入するためには、当該法人が当該事業年度に当該資産をその事業の用に供したことが必要であることはもちろんであるが、それのみでは足らず、当該事業年度以前に当該資産を取得し、これによって右資産の取得価額を構成する費用が発生していることが必要であると解される。

そして、完成された物を引き渡すことを内容とする請負契約によって減価償却資産を取得する場合においては、原則として、注文者が請負人から完成した当該資産の引渡しを受けることによって、右の「取得」があったと解するのが相当である。なぜならば、右のような請負契約においては、民法上、完成した目的物の引渡しによって、目的物の所有権が注文者に移転し、かつ、請負人の報酬請求権が発生する(民法六三三条)こととされているので、一般に、完成された目的物の引渡しによって注文者がこれを取得し、かつ、報酬支払義務が発生するものとみるのが相当であるし、また、課税実務上も、請負による収益の帰属の時期について、「請負による収益の額は、別に定めるものを除き、物の引渡しを要する請負契約にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の全部を完了した日の属する事業年度の益金の額に算入する。」(法人税法基本通達二-一-五)とされ(<書証番号略>)、目的物の引渡しによって請負人に報酬請求権が発生する時期においてその収益を請負人の収入に計上するという取扱いがされているので、その反面、注文者においても完成した目的物の引渡しを受けることによってこれを取得したものとみるのが合理的であるということができるからである。

さらに、右のように、請負契約による減価償却資産の取得の時期について完成した目的物の引渡しの時を基準とする場合、機械装置等の設備及び調整を目的とする請負契約において、当該装置を注文者が減価償却資産として取得したというためには、請負人において当該装置の試運転及び調整作業を完了し、当該機械装置等が所期の性能を有することが確認され、これに基づいて目的物の引渡しが行われることが必要であると解すべきであり、単に、目的の機械装置等が注文者の工場に設置され、注文者がこれを事実上占有するに至ったというだけでは、請負人の仕事は完成しておらず、注文者において完成した目的物の引渡しを受けたものということはできないと解するのが相当である。

なお、原告は、減価償却が認められるためには、当該事業年度内において、減価償却資産を事業の用に供したことで足り、右資産の引渡しの有無自体は、「事業の用に供されている」か否かの判断資料の一つにすぎない旨主張する。しかし、減価償却資産を原告の事業の用に供することは、右資産を取得することとは別個の要件であり、たとえ右資産を事業の用に供している場合であっても、その引渡しが未了で未だ取得原価を構成する費用の発生を伴っていないときは、減価償却費を損金計上することはできないというべきであるから、右の主張は採用することができない。

2  右の解釈を前提として、本件設備が本件事業年度内に取得されたものであるか否かについて検討する。

(一) 本件設備の原告の工場への設置経過等については、前記第二の一2記載のとおりであり、本件契約は、完成された物を引き渡すことを内容とする請負契約に当たるというべきである。

(二) 右の事実及び証拠(<書証番号略>、証人鈴木、証人松田)によれば、次のような事実が認められる。

① 本件タービンについては、昭和六〇年三月から四月にかけても、トラブルの発生が続き、三月二七日の時点でも、受注者であるタクマ側では、連続運転の再開、性能クリヤー、運転管理引渡し、官庁立会試験合格という点が先決の課題となっていた。四月八日ないし一〇日に行われた官庁立会試験の際も、負荷遮断テストで二回失敗し、再調整の後パスするという状況であった上、もともと、官庁立会試験の内容は、構造外観検査、保安装置の検査、負荷遮断試験、公害測定等であり、試験の際には、発生した蒸気を大気中に逃がす形で行われており、同試験において一万キロワットの出力が確認されたとしても、直ちに、契約上の性能が確認されたことにはならないものであった。すなわち、原告工場においては、蒸気を逃がさないで次の工程で使用することとなっていたため、営業面での効率的な出力という意味では、性能の確認はなされなかった。したがって、官庁立会試験合格直後の時点においても、原告と受注者側との間には、総合効率、公害数値等の点の性能確認、運転員留置きの件、タービン全体の不信感という問題が残っており、調整が必要であった。

② 同年四月二四日には原告方の会議室において、タクマ、住友商事及び日本鋼管関係者らが出席して、原告に対し、本件設備の性能報告等が行われたが、席上、原告代表者から、ボイラー効率が出ていない、タービン性能が出ていない(契約どおりの発電が出ない、蒸気リークが多い)、公害数値についても一般のc重油でクリアしないと困るという指摘があり、受注者側では、それぞれの問題点について検討し、見解書を提出することとなった。

③ 結局、タクマ側では、連続的な出力として契約上の保証値である一万キロワットの性能を確保するため、本件タービンについて、一万〇五〇〇キロワットの発電性能を有するように改造することとし、同年六月一二日から二二日まで、タービンを停止して本件改造工事を行った。

④ そして、同月二六日及び二七日に本件設備の性能確認テストが実施され、九五〇〇キロワットの発電性能と一万〇四五〇キロワットの出力を有することが確認された後、同年七月一二日、原告方会議室において本件設備の性能報告がなされ、原告により本件設備の検収が行われた。同月一五日付で原告名義で住友商事宛に作成された検収書によれば、検収の対象は、注文番号58'12/3付、件名N-一二〇〇P型ボイラ並びに一万kw発電装置、金額七億二〇〇〇万円、昭和六〇年六月二七日と記載されていた。

(三) 本件設備の請負代金は、検収の四か月後に支払われることになっていたところ(前記第二の一2(一)④)、本件設備の性能が確認された日であり、かつ、右(二)④のとおり検収書に記載された日でもある同年六月二七日のちょうど四か月後である同年一〇月二六日に決済されている(前記第二の一3)。

(四) 右(一)ないし(三)の事実を総合すると、本件設備については、同年四月八日ないし一〇日に行われた官庁立会試験に合格した時点においても、本件契約で求められている性能を有することが確認されておらず、その後、受注者であるタクマの側で本件改造工事を行うことによって初めて所定の性能が達成されたものであり、それが確認された後に、原告によって検収がされたものということができる。

なお、原告は、同年二月二七日に行われた総合負荷試験において所定の出力が確認されたことが性能確認に当たると主張するけれども、同年四月に行われた官庁立会試験合格後においても、前記(二)①のとおり、性能確認がなされたとはいえない状況であったのであるから、原告の右主張は理由がない。

さらに、原告は、同年七月に行われた検収は、本件設備の引渡し後に生じた故障の修理についての検収であると主張するけれども、検収書の記載からは明らかに本件設備全体の検収が行われたものと解されるし、前認定の事実経過に照らせば、本件改造工事は、単に引渡し後に生じた故障の修理ではなく、本件契約上要求されている性能を確保するために行われたものというべきである。

また、本件契約の条項によれば、官庁立会試験は本件設備の引渡しを受けた原告の責任において行われるものとされており、実際にも原告が申請をし、原告の技術者がこれに立ち会ったのであるが(<書証番号略>)、本件契約は、引渡しの前提として、原告の立会いの下に住友商事が検査及び性能試験を行い、原告がこれを確認することを要件としているところ、現実には、右認定のとおり、官庁立会試験が開始された同年四月八日以前に本件設備の検査及び性能試験が完了し、原告において本件設備の性能を確認していたものではなく、したがって、本件においては、本件契約の条項どおりの経過で官庁立会試験が行われたものではないと解されるから、官庁立会試験が行われたことをもって、それ以前に本件設備の検査及び性能試験が終了していたものと認定することはできない。

(五)  右に述べたところによれば、本件設備の試運転及び調整作業は、同年六月二六日及び二七日に行われた性能確認テストにおいて、本件設備が本件契約で定められた所期の性能を有することが確認されたことによって完了したものであり、したがって、完成された本件設備の引渡しは、右性能の確認に基づいて原告によって検収がされた同年七月一二日に行われたものと認めるのが相当である。

別表(1)

課税処分経緯表

区分

年月日

所得金額

増差所得金額

税額

過少申告加算税

確定申告

昭和60年

7月1日

1億7954万2632円

△419万3101円

修正申告

昭和62年

5月27日

1億7977万3471円

④(②-①)

23万0839円

△417万0378円

更正処分

昭和62年

6月30日

4億6338万6721円

⑤(③-②)

2億8361万3250円

1億2392万8200円

902万2500円

異議申立

昭和62年

8月31日

1億7977万3471円

△417万0378円

0

異議決定

昭和62年

11月25日

棄却

審査請求

昭和62年

12月25日

1億7977万3471円

△417万0378円

0

審査裁決

平成元年

1月12日

棄却

別表(2)

修正申告内容等一覧表

科目

内訳

修正申告額

更正処分額

増差額

売上高

387億9703万2355円

同左

売上原価

減価償却費以外の売上原価

317億0099万8499円

同左

減価償却費

10億1456万6578円

9億5902万5692円

5554万0886円

売上原価合計

327億1556万5077円

326億6002万4191円

5554万0886円

販売費及び一部

管理費

60億5227万0940円

同左

営業外収益

19億7555万3156円

同左

営業外費用

12億5590万6538円

同左

特別損失

1532万0364円

同左

税引前当期利益

(①+④)-(②+③+⑤+⑥)

7億3352万2592円

同左

法人税等

9494万4542円

同左

当期利益

⑦-⑧

6億3857万8050円

同左

加算額

1億6721万4826円

同左

減算額

特別償却準備金以外の減算額

2億8502万9278円

同左

特別償却準備金

4億4884万2690円

2億2077万0326円

2億2807万2364円

減算額合計

7億3387万1968円

5億0579万9604円

2億2807万2364円

法人税額から控除

される所得税額

7994万4542円

同左

受取配当等の

益金算入額

2790万8021円

同左

所得金額

(⑨+⑩+⑫+⑬)-⑪

1億7977万3471円

4億6338万6721円

2億8361万3250円

なお、本件設備について、原告が、同年二月二七日以降、その管理権を得てこれを運転しているとしても、右の検収が未了であった以上、請負人の仕事は完成しておらず、未だ引渡しがあったといえない。

したがって、原告が本件設備を取得したのは昭和六〇年七月一二日であるというべきであり、原告は、本件事業年度において、本件設備につき、法人税法三一条一項の減価償却をすることはできない。

二措置法四五条の二の特別償却の規定は、その条文上、中小企業者等が機械等を取得したことが要件とされており、右「取得」の意義については前記一1で判示したところと異なるところはないから、結局、前記一2のとおり、原告は本件事業年度内に本件設備を取得したものではなく、本件事業年度において、本件設備につき措置法四五条の二の適用はないものというべきである。

第四結論

以上のとおりであるから、原告は、本件事業年度において、本件設備にかかる減価償却費及び特別償却準備金を計上することはできない。そして、本件設備にかかる減価償却費及び特別償却準備金以外の原告の所得金額に関する計算関係が別表2の「更正処分額」欄記載のとおりとなることは、前記第二の一1(二)のとおりであるから、原告の本件事業年度の所得金額は四億六三三八万六七二一円であると認められ、弁論の全趣旨によれば、右所得金額を前提として法人税額及び国税通則法(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)六五条一項の規定による過少申告加算税額を算定すると、それぞれ一億二三九二万八二〇〇円及び九〇二万二五〇〇円となることが認められるから、これと同内容の本件課税処分はいずれも適法であるということができる。

(裁判長裁判官瀬戸正義 裁判官杉原則彦 裁判官後藤博)

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